相談支援専門員が押さえたい「就労準備性」の観察ポイント
「就労につなげたい気持ちはある。でも、今どの段階なんだろう?」
相談支援の現場では、本人の希望と現実のギャップ、家族の焦り、支援資源の選択などが重なり、判断が難しくなる場面が少なくありません。
そこで鍵になるのが「就労準備性(Work Readiness)」です。
就労準備性は“能力の優劣”ではなく、今の状態に合った支援ルートを選ぶための観察視点。本記事では、相談支援専門員が押さえておくと実務で効く観察ポイントを整理します。
🧭 就労準備性は「就職できるか」ではなく「続けられる形があるか」
就労準備性を“今すぐ一般就労が可能か”で測ると、本人の負荷が高くなりがちです。
見るべきは、結果よりもプロセス。
通所や生活の土台はあるか
相談・調整ができるか
つまずいた時に立て直せるか
支援を受けながら継続できるか
つまり、「働く」より先に「続く」を観る、ということです。
👀 観察ポイント①:生活リズム・体調管理(“通える土台”)
まず最優先は「通所が成立するか」。ここが整っていないと、どんな職業訓練も積み上がりません。
起床〜外出がどの程度安定しているか
服薬・通院・睡眠が崩れた時のリカバリーがあるか
体調の波(頻度・トリガー・回復パターン)が見えているか
疲労のサインを本人が言語化できるか(または支援者が拾えるか)
※「週5が無理=不可」ではなく、週1でも“続けて戻れるか”を見立てると適切な提案につながります。
🗣️ 観察ポイント②:コミュニケーション(“相談できる力”)
就労で一番効くのは、実はスキルよりも「相談」と「調整」です。
分からない時に確認できるか(言葉/態度/タイミング)
困りごとを“起きてから”ではなく“起きそうな段階”で共有できるか
指示の理解にズレが出た時に、再確認の行動が取れるか
感情が高まった時に、落ち着く手段を持っているか(または借りられるか)
言語化が難しい方でも、合図・カード・メモ・ジェスチャーなど代替手段が機能していればOKです。
🧠 観察ポイント③:認知特性と作業特性(“できる形”の見立て)
「何ができないか」より「どうすればできるか」を観ます。
手順の保持:口頭指示が強い/視覚支援が有効/反復で定着 など
注意・集中:環境刺激(音・人・匂い)への影響、切替のしやすさ
速度:スピードより正確性が強みか、見直しで安定するか
こだわり:品質に寄与するか、切替困難につながるか
ミス傾向:ヒューマンエラーの種類(抜け/勘違い/焦り/確認不足)
ここが整理できると、A型/B型/移行/就労定着の提案が“本人に合う形”になります。
🔥 観察ポイント④:ストレス耐性(“崩れ方”と“戻り方”)
「ストレスに強いか」より、崩れた時に戻れるかが重要です。
崩れる前兆があるか(表情・言動・身体症状)
崩れた時の行動パターン(黙る/離席/攻撃的/過呼吸 等)
立て直しに必要な時間・環境・関わり方(静かな場所、短い声かけ等)
事後の振り返りが可能か(当日無理でも翌日なら可、など)
“崩れない”より“戻れる”が準備性。ここを共有できると現場は回ります。
🎯 観察ポイント⑤:動機づけ(“やりたい”の質と持続)
モチベーションは高い/低いではなく、質を見ます。
本人の言葉で「働きたい理由」が語れるか(1行でもOK)
外発(家族・制度)だけでなく、内発(役割感・自信)が芽生えているか
目標が“遠い就職”だけでなく、“今週できること”に落ちているか
成功体験を受け取れるか(褒められても否定してしまう等)
目標が抽象的な場合は、“体験→言語化→次の一歩”の順で支援すると整いやすいです。
🤝 観察ポイント⑥:支援資源の使い方(“支援を借りる力”)
就労準備性の隠れた重要項目が、「支援を使えるか」です。
支援者に頼ることへの抵抗(恥・罪悪感)が強くないか
支援の提案を“試してみる”柔軟性があるか
連絡・相談のルートが整備されているか(本人・家族・支援者)
支援者側の役割分担が明確か(誰が何を見るか)
本人が“助けを借りる”を学べると、一般就労への移行も定着も強くなります。
🧩 支援提案につなげる「簡易チェック」10項目
最後に、実務で使いやすい観察の要点を10個にまとめます。
起床〜外出が成立する頻度
体調悪化のサイン(本人/周囲が気づけるか)
回復に必要な条件(休息・環境・声かけ)
困った時の相談行動(誰に/いつ/どう)
指示理解の特性(口頭/視覚/実演)
作業の得意・苦手(正確性/速度/継続)
ストレス時の反応と立て直し
目標の言語化(1行でOK)
成功体験の受け取り方
支援資源を“使える形”になっているか
これらが共有されると、事業所側も“受け入れ設計”がしやすくなり、ミスマッチが減ります。
✅ 行動:明日からの実務でできる一歩
アセスメントに「崩れ方/戻り方」の項目を追加する
見学前に「相談ルート」と「調整ルール」を確認する
“週5”ではなく“週1の継続”から設計する
情報共有は「困りごと→有効だった支援→避けたい対応」の順で渡す
就労準備性は、本人を評価するためではなく、本人が続けられる支援ルートを選ぶための羅針盤です。
関係機関と事業所が同じ観察視点を持てるほど、本人の安心と成長につながっていきます。