“作業量”より“回復サイクル”を見る支援の視点
「作業はできているのに、続かない」
「一日は頑張れるけど、翌日から崩れる」
支援現場でよくあるこのケースは、能力不足というより 回復設計の不足 で起きていることが多いです。
就労支援・生活支援で本当に見るべきなのは、瞬間的な作業量だけではなく、
“負荷を受けたあとに、どれくらいの時間で戻れるか” という回復サイクルです。
🧭 結論:支援の焦点は「できた量」より「戻れる力」
作業量だけを評価すると、こうなりやすいです。
できた日だけを見て「もっといける」と判断する
負荷を上げる
数日後に崩れる
本人の自信が下がる
支援側も「なぜ?」となる
一方で、回復サイクルを見ると、
無理のない負荷設定ができる
崩れる前に調整できる
継続率が上がる
本人の成功体験が積み上がる
つまり、“働けるか”より“続けられるか” の見立てがしやすくなります。
😣 作業量だけを見ると見落としやすいサイン
本人が一見できていても、実はこんなサインが出ていることがあります。
翌日に過眠・起きられない
帰宅後に何もできない(食事・入浴が崩れる)
イライラ・不安・涙もろさが増える
相談が減る(我慢している)
欠勤前に遅刻が増える
これらは「甘え」ではなく、回復が追いついていないサインです。
🔍 見るべき視点①:作業の“結果”ではなく“反動”
支援で確認したいのは、当日の出来高だけではありません。
✅ 観察ポイント
作業後の疲労感(本人の主観0〜10)
回復にかかる時間(数時間/翌日/2日以上)
生活への影響(睡眠・食欲・通院・家事)
気分の変動(不安・焦り・落ち込み)
次回通所への影響(行きしぶり・遅刻)
「できた」+「その後どうだったか」 をセットで見るのが重要です。
🔄 見るべき視点②:本人ごとの“回復サイクル”を把握する
同じ作業でも、回復サイクルは人によって違います。
負荷をかけても当日中に戻る人
翌日に疲れが出る人
2〜3日遅れて崩れる人
体調より先にメンタルが落ちる人
この違いを見ずに一律で負荷を上げると、ミスマッチが起きます。
支援の実務では、まず 「どのタイミングで反動が出るか」 を掴むのが先です。
🧩 実務で使える「回復サイクル観察」の型
支援記録に次の4つを入れると、見立てが一気に精度アップします。
負荷:何をどのくらいやったか(作業量・時間・対人負荷)
当日反応:疲労・集中・気分の変化
翌日反応:起床、外出、気分、生活動作
回復条件:何があると戻りやすいか(休憩、静かな環境、短時間化など)
例(記録イメージ)
負荷:梱包2時間+対人説明15分
当日反応:作業中は安定、終了後疲労7/10
翌日反応:起床困難、午前は動けず午後回復
回復条件:帰宅後静かな環境、夕方の入浴で回復しやすい
これがあると、次回の設計がしやすくなります。
🛟 支援の視点③:「増やす」前に“維持できたか”を見る
負荷調整で大切なのは、元気な日ではなく 安定した週 を基準にすることです。
負荷を増やしてよい目安(例)
同じ負荷で2〜3週間、回復が大崩れしない
欠勤が増えていない
本人が相談できている
生活(睡眠・食事)が保てている
増やさない方がよいサイン
回復に48時間以上かかることが増えた
帰宅後の生活が崩れる
表情が固い・相談が減る
遅刻→欠勤の流れが出てきた
「できたから増やす」ではなく、
“戻れているから増やす” が安全です。
🤝 支援の視点④:回復を“本人の努力”にしない
回復サイクルは、本人の根性ではなく 環境と支援設計 で改善できます。
支援でできる工夫
A/B/Cプラン(通常/軽め/回復)を用意する
休憩のルール化(時間・場所・戻り方)
対人負荷と作業負荷を同日に重ねすぎない
通院日や生活イベントの前後は負荷を軽くする
相談テンプレで我慢を減らす
回復を支援計画に入れると、継続率が上がります。
📝 支援計画・モニタリングに落とす時の書き方(例)
❌ 抽象的
作業量を増やしていく
体調に配慮する
✅ 具体的(回復サイクル視点)
「梱包作業は週3回・各90分から開始し、翌日の起床・食事・通所への影響を記録する。回復が24時間以内で安定した場合に、作業時間を15分延長する」
「疲労サイン(頭痛・焦り・無言)が出た場合はBプラン(軽作業+休憩追加)へ切替える」
“配慮”ではなく、運用ルールとして書くのがポイントです。
🌈 この視点があると、本人の自信も守れる
作業量中心の支援だと、崩れた時に本人は
「自分はダメだ」「続かない」と受け取りやすくなります。
でも回復サイクル視点があると、
「量ではなく調整の問題だった」
「戻れる方法がある」
「自分に合うペースがある」
と捉え直せます。
これは、就労継続・一般就労移行・定着のどの段階でも大きな支えになります。
✅ 明日から使える実務アクション(関係機関向け)
記録に「翌日反応」を1項目追加する
支援会議で「作業量」だけでなく「回復時間」を共有する
負荷調整の基準を「できた日」ではなく「戻れた週」にする
A/B/Cプランを本人・家族・事業所で共通化する
“作業量”を見る視点に、回復サイクルを足すだけで、支援の精度はかなり上がります。
本人が長く続けられる支援ルートづくりに、ぜひ使ってみてください。