“できる仕事”を増やすタスク設計の考え方
「任せたい気持ちはあるけど、どこまで任せていいか分からない」
「一部はできるのに、全体で見ると難しくなる」
障害者雇用の現場でよくある悩みです。
ここで大事なのは、本人に合わせて“仕事を減らす”ことではなく、
仕事を設計し直して“できる仕事”を増やすことです。
ポイントは、能力評価より先に タスクの分解と再配置 をすること。
🧭 結論:人に合わせる前に、仕事を分ける
「この仕事ができる/できない」と丸ごと判断すると、可能性を狭めやすいです。
実際には、1つの仕事の中にいろんな要素が混ざっています。
たとえば同じ業務でも、こんな要素があります。
手順を守る
数える
判断する
人に確認する
スピードを出す
丁寧に仕上げる
例外対応する
つまり、“仕事”ではなく“仕事の中身”を見れば、任せられる部分は増えることが多いです。
✅ まず押さえる:タスク設計の基本は「分解→基準化→段階化」
“できる仕事”を増やす設計は、この3ステップが基本です。
分解:仕事を小さい工程に分ける
基準化:何をもってOKかを明確にする
段階化:難易度を上げる順番を作る
この順番にすると、現場で再現しやすくなります。
🧩 ① 分解:仕事を「工程」と「負荷」に分けて見る
分解のコツは、作業手順だけでなく、何が負荷になるかも見ることです。
例:梱包作業
工程A:材料をそろえる
工程B:袋に入れる
工程C:シールを貼る
工程D:数量を数える
工程E:箱に入れる
工程F:完成確認
工程G:不足時の報告(例外対応)
負荷の種類(別軸)
手先の細かさ
スピード
数字の正確性
判断の多さ
対人コミュニケーション
この分け方をすると、
「全部は難しいけど、A〜Eはできる」みたいに設計できます。
🧩 ② 基準化:「できた」の定義を先に作る
“できる仕事”が増えない原因のひとつが、合格ラインの曖昧さです。
❌「ちゃんとやって」
❌「いい感じで」
✅「10個で1セット、シール位置は右上、ズレなし」
✅「清掃後に水滴なし、備品補充済み」
基準化で入れるべき4点
開始点(どこから始めるか)
終了点(どこまでで完了か)
品質基準(OK/NG)
迷った時の対応(止める・確認する)
基準があると、「できる/できない」が感覚じゃなく事実で見られます。
🧩 ③ 段階化:仕事を“レベル”で作る
いきなり全部任せるより、レベルを分けると成功率が上がります。
例:レベル設計(梱包)
Lv1:見本を見ながら1工程だけ(袋入れ)
Lv2:2〜3工程を連続で実施(袋入れ→シール)
Lv3:数量確認まで含める(途中チェックあり)
Lv4:1セットを一人で完了(最終確認は職員)
Lv5:安定後、別商品の手順にも展開
これだと「今どこか」が見えるので、本人も現場も安心です。
🔍 “できる仕事”を増やすために見るべき観点(実務向け)
1) できない原因は「能力」か「条件」か
本人の課題に見えても、実は条件の問題なことが多いです。
口頭指示だけ → 見える化で解決
同時進行が多い → 1タスク化で解決
騒音が強い → 配置変更で解決
急かされる → 途中チェックで安定
条件を変えたらできるなら、タスク設計の勝ちです。
2) “できる時間帯”を使う
同じ人でも、時間帯でパフォーマンスは変わります。
午前は立ち上がりが遅い → 軽作業から
午後は疲れやすい → 判断少なめ作業にする
「できる仕事」だけでなく、できる時間に置くのも設計です。
3) 例外対応を切り分ける
通常作業はできても、例外対応で崩れることは多いです。
なので最初は分けます。
通常フロー:本人担当
例外(不足・破損・不明):職員へ報告
これだけで一気に任せられる範囲が広がります。
💬 現場で使える言い換え(設計の会話)
「この人には難しい」ではなく、こう言い換えると改善しやすいです。
「どの工程なら安定しますか?」
「判断を減らしたらできますか?」
「見本・チェック表があれば回りますか?」
「例外対応だけ分けたら任せられますか?」
「何を固定すれば品質が安定しますか?」
“人の問題”から“仕事の設計”に話を移すのがポイントです。
🛠️ すぐできる:タスク設計シート(簡易版)
現場で1枚あれば十分です。
【タスク設計シート】
業務名:
工程(分解):
1.
2.
3.
4.負荷ポイント(何で詰まりやすい?):
OK基準:
NG例:
迷った時の対応:
レベル(Lv1〜Lv5):
現在の担当レベル:
次に増やす工程:
このシートがあると、OJTの引き継ぎも楽になります。
🌈 “できる仕事”が増える職場の共通点
うまくいく職場は、本人に合わせて配慮するだけでなく、
業務そのものを柔軟に設計しています。
一気に任せない
工程で任せる
基準を明確にする
例外を切り分ける
段階的に広げる
これができると、本人の自信も現場の安定も同時に育ちます。
✅ 今日からできるアクション(企業向け)
1つの業務を「工程」に分解する(まず4〜7個)
各工程のOK基準を1行で書く
例外対応を別タスクに切り分ける
Lv1〜Lv3だけ作って、段階的に任せる
“できる仕事”は、探すより 設計すると増える です。
まずは1業務だけ、分解してみるところから始めてみてください。